木々に囲まれた渓谷の澄んだ川にかかる赤い吊り橋。葉が色づき始めている

札幌 / ガイド

定山渓温泉:かっぱをたどって、物語が始まった淵へ

定山渓温泉定山渓温泉

かっぱは、ひとりの青年が沈んだことから始まった

お湯だけが目当てで定山渓へ来ても、この町のかっぱに出会うことになります。頭に水の皿をのせた、川の妖怪です。橋の上にも、足湯のそばにも、大通りにもいます。定山渓は札幌市南区、つまり札幌市の中にある温泉町で、この町に伝わるかっぱの話は、明るい話ではありません。

定山渓観光協会は、こう伝えています。豊平川がまだ、上流から木材を流して運ぶほど水の多い川だったころのことです。道路工事に従事していた青年が淵で魚を取っていたとき、何かに引き込まれるように川底へ沈んでいきました。近くで木材を流していた人たちがすぐに飛び込みましたが、淵が深くて助けられず、青年はとうとう見つかりませんでした。そして一周忌の夜、青年は父の夢枕に立ち、「私は今かっぱの妻と子供と一緒に幸せに暮らしている」と語ったといいます。

それ以来、この淵は「かっぱ淵」と呼ばれるようになり、観光協会によれば、その後ここで溺れる人はいなくなったといわれています。

私は、この夢の話が頭から離れません。川に息子を奪われた家族がいて、町が語り継いだ物語は、何もない川底のかわりに、その青年に妻と子供を与えています。この町の通りにいる陽気なかっぱの像を、その優しさと切り離して思い浮かべるのは、私には難しいことです。

ですから、ただお湯につかるだけで終わらせないでください。午後の時間があるなら、お湯からお湯へではなく、かっぱからかっぱへ定山渓を歩いてみてください。物語が始まった淵から大通りの手湯まで、お湯はその合間に楽しめばいいのです。

冬以外なら、淵から歩き始める

できれば、温泉街の真ん中ではなく二見公園から歩き始めてください。淵へ向かう道はここから始まります。観光協会が定山渓温泉のシンボルと呼ぶ「河童大王」の像がここに立っていて、近くの川岸にはもう1体、「ころんころん」という名前のかっぱがいます。

公園からは、赤い二見吊橋が豊平川を渡っています。橋の上から見下ろすと、かっぱ淵そのものと、二見岩と呼ばれる川の中の2つの岩が見えます。伝説の舞台はここです。川沿いの散策路は、二見公園から吊り橋を渡って、かっぱ淵へと続いています。

その散策路の、淵のそばに、彫刻家・阿部典英のかっぱがいます。名前は「アー・イタイタ」。名前を読んでおかしく感じ、この像が立っている場所を思い出して、おかしく感じたことを少し申し訳なく思いました。

黄色やオレンジ色の木々の下、落ち葉に覆われた細い森の小道
10月の定山渓の散策路。写真:t-konno / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

公園の名前にも、故郷を恋しく思う物語があります。1880年から湯治場を営んだ佐藤伊勢造が、景色が故郷・伊勢の二見が浦に似ていたことから、ここを二見と名づけたと伝えられています。住む場所を遠く離れた人の物語が2つ、ひとつは水の上に、ひとつは水の下にあるわけです。

10月に来るなら、ここは紅葉の場所でもあります。観光協会は、二見公園を紅葉の名所として紹介しています。いまは公園の周りで河川の工事が行われていて、歩行者には表示つきの迂回路が用意されています。出かける前に、観光協会のお知らせを確かめてください。

温泉街へ戻る:お湯のそばのかっぱ

淵からは吊り橋を渡って戻り、温泉街の通りへ入ります。ここでは、かっぱが1体、2体と現れ、そのいくつかは町の無料のお湯に寄り添っています。

温泉街の真ん中にある月見橋には2体のかっぱがいて、そのうちの1体の名前は「ボクと記念写真」です。淵の物語のあとだと、ただ写真に一緒に写りたいだけのかっぱがいることに、私はほっとしました。

同じ橋のたもと、町の名前のもとになった僧の名を冠した定山源泉公園では、「湯の滝のかっぱ」を探してみてください。ここは足湯に座ったり、80℃以上の源泉で温泉たまごを作ったりできる場所でもあります。

札幌から車やバスで来ると、最初に通る足湯が「足のふれあい太郎の湯」です。ここにもかっぱがいて、名前は「かっぱ太郎」。そばには八角形の広い湯船があり、15人ほどが一緒に座れます。タオルを忘れても、ここで買えます。そして観光協会の向かいには、阿部典英のもう1体のかっぱ「イイユダナ」がいます。溺れた青年の伝説のあとで、こんなにありふれたことを言うかっぱの名前を読むのが、私は好きです。このかっぱがほめるお湯は食塩泉で、無色透明・無味無臭です。硫黄のにおいは期待しないでください。

雪に深く埋もれた岩と川岸。細い川の両岸にホテルの建物が並んでいる
冬の定山渓。川の両岸にホテルが並びます。写真:Selixshiraii / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

手湯は最後に

手湯は散歩の最後に取っておいてください。いつでも使えます。「かっぱ家族の願掛け手湯」は、公園から坂を上った国道230号沿いにあり、かっぱの家族の像が見守っています。

淵の物語のあとでは、この家族をただの飾りとして見るのは、私には難しくなります。伝説の青年は、かっぱの妻と子供がいると語りました。ここ大通りで、お湯を注げるかっぱの家族を見ていると、どうしても彼の家族のことを思い出します。

この手湯には作法があります。二見公園の河童大王の方向に向かって手を合わせます。かっぱの頭の皿にお湯を注ぎ、口からこぼれるお湯で手を清めて、「オンカッパヤウンケンソワカ」と3回唱えてから願をかける。そうすると願いごとが叶う、といわれています。

冬に来るなら

観光協会によると、冬は積雪のため二見吊橋まで行けず、河川工事の迂回路も閉鎖されます。ですから雪の季節は淵をあきらめて、町の中のかっぱだけを歩いてください。月見橋の2体、定山源泉公園の湯の滝のかっぱ、大通りのかっぱ太郎とイイユダナ、そして手湯の家族です。公園の湯船から湯気が立ちのぼり、かっぱの頭の皿に雪が積もっているところを思い浮かべてみてください。

伝説は、淵を見なくても伝わります。それがどこにあるのか、あなたはもう知っています。ほかの季節なら赤い吊り橋の上から見えるはずの、かっぱ淵です。

行き方と帰り方

札幌の中心からいちばん簡単なのは、じょうてつバスの「かっぱライナー号」です。札幌駅から出る予約制のバスで、大通西1丁目とすすきのにも止まります。所要時間は1時間あまりで、予約は前日の夕方5時までです。

かっぱライナー号は昼のバスで、札幌へ戻る最終便は、定山渓の停留所を夕方5時過ぎに出ます。じょうてつバスの一般の路線バスは夜まで走っていて、時刻は下の表に載せました。町が静かになる時間に手湯を楽しみたいなら、日帰りではなく泊まってください。

出かける前に

かっぱの像定山渓観光協会の一覧で21体。ほとんどが定山渓にあり、小金湯温泉に2体、定山渓ダム下流園地に3体。温泉街では、月見橋に2体、定山源泉公園に1体、足のふれあい太郎の湯に「かっぱ太郎」、二見公園に「河童大王」と「ころんころん」、かっぱ淵の散策路に「アー・イタイタ」、観光協会の向かいに「イイユダナ」
定山源泉公園足湯と「おんたまの湯」(温泉たまご)。7:00〜21:00・毎日開園。無料。定山渓温泉東3丁目
足のふれあい太郎の湯国道230号沿い、札幌から来て最初の足湯。7:00〜20:00。無料。タオルは自動販売機で200円
かっぱ家族の願掛け手湯国道230号沿い。24時間。無料
二見吊橋無料。定山渓温泉西4丁目。冬は積雪のため行けない。二見公園周辺で河川工事中:表示に従って歩行者用迂回路へ(迂回路は冬季閉鎖)
ホテルの日帰り入浴観光協会の一覧では、日帰り入浴ができる施設は10か所以上で、ほとんどがホテルや旅館。営業時間や休みの日は施設ごとに違うので、それぞれのホテルのサイトで確認
かっぱライナー号じょうてつバス。札幌駅27番のりば・大通西1丁目・すすきのから60〜70分。上り下りとも1日11本(札幌駅発の始発9:10・最終16:00、定山渓車庫前発の最終17:06。2026年10月1日改正)。予約制:1か月前から前日17:00まで。予約なしで乗れるのは空席がある場合のみ。札幌駅〜定山渓車庫前は片道1,700円、ネット予約・決済なら1,460円。出かける前に最新の時刻表を確認
一般の路線バスじょうてつバス快速8。時刻表に予約の案内はなし。定山渓車庫前から札幌駅への最終は平日20:48(22:07着)、土日祝20:40(21:58着)。2026年4月1日改正の時刻表、2026年10月18日確認
車で行く場合二見公園近くのタイムズ定山渓観光駐車場、1日500円

2026年9月27日と10月18日に確認。

定山渓で私ならこうする

1泊で行くつもりです。冬以外の季節に、まず二見公園まで歩き、かっぱ淵にかかる赤い吊り橋の上で、あの青年と父の夢を思い出せるくらいのあいだ立っていたいと思います。それから、かっぱからかっぱへと温泉街へ戻り、僧の名を冠した公園で温泉たまごを作り、遅い時間に手湯で締めくくります。自分の家族をもつかっぱの頭に、お湯を注ぎながら。

この記事の筆者は、定山渓を訪れていません。 事実は下の公式情報によるものです。情景を思い浮かべていただく箇所は、想像としてお読みください。

  • 定山渓観光協会 — かっぱ伝説とかっぱ淵:jozankei.jp/about/ /河童伝説スポット21か所の一覧(各像の制作者と場所):jozankei.jp/kappa/ /定山渓公式パンフレット2025(二見公園から吊り橋を渡ってかっぱ淵へ続く二見定山の道、かっぱ伝説):jozankei.jp/download/pamphlet/。2026年10月18日確認
  • 定山渓観光協会 — 町の歴史と美泉定山、二見公園、河童大王の像、佐藤伊勢造による命名、冬の二見吊橋、工事のお知らせ、日帰り入浴の一覧:jozankei.jp/about/history/、jozankei.jp/spot/1116/、jozankei.jp/en/spot/1269/、jozankei.jp/en/spot/163/、jozankei.jp/news/futami-park-notice/、jozankei.jp/en/oneday//定山源泉公園は年中無休:jozankei.jp/en/oneday/jozan-gensen-park/。2026年9月27日確認
  • 札幌観光協会(ようこそさっぽろ) — 定山源泉公園、おんたまの湯、足湯、手湯:sapporo.travel/spot/facility/jozankei_onsen/、sapporo.travel/spot/facility/jozangensen-park/。2026年9月27日確認
  • 札幌市(南区) — 泉質とお湯の性質:city.sapporo.jp/minami/ishibumi/chiku10.html。2026年9月27日確認
  • じょうてつバス — かっぱライナー号の予約、停留所、運賃:jotetsu.co.jp/bus/kappa_liner/ /かっぱライナー号と快速7・快速8の配布時刻表(2026年4月1日改正・かっぱライナー号は10月1日改正):jotetsu.co.jp/bus/times/260401/download.html。2026年10月18日確認
  • 写真:トップの写真と秋の散策路は t-konno(CC BY-SA 3.0)、冬の町は Selixshiraii(CC BY-SA 4.0)。いずれも Wikimedia Commons

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